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保健室から見守り続けた23年間
篠崎元子先生インタビュー

2020/03/14

23年半にわたって、中杉生の体と心を支えてきてくださった保健室の篠崎元子さんが2020年3月いっぱいで定年を迎えます。保健室でのお仕事の話、保健室から見える中杉生のこと――などお話を伺いました。(聞き手:大舘瑞城)

――中杉でお仕事を始めたのはいつですか?

 

篠崎:1996年の9月からです。32期生が3年生の時。勤続23年半、ということになります。

 

 

――と、いうことは新井原クン(※本校教諭 新井原博嗣は33期生)が、まだいた頃ですね?

 

篠崎:いたのでしょうけれど、新井原先生は保健室に来るようなタイプではなかったので、印象には残っていないですよ(笑)

 

 

――当時の中杉の印象はどんな感じでしたか?

 

篠崎:よく言えば、とっても活気のある学校だな、と…。

 

 

――「コギャル」ブームの時期で、中杉にもギャルみたいな子がいた頃ですよね?

 

篠崎:いましたね~!顔黒(ガングロ)、茶髪にお化粧にルーズソックス、男の子は「腰パン」でしたね。見た目がだらしなかったり、派手だったりしていたものだから、近隣の人には、「中杉は頭は良いのだろうけど、生活指導をしない学校」と思われていて、近隣の人は通わずに遠方から通ってくる生徒が大勢いる「ドーナツ化現象」が起きていました。(※篠崎先生は、中杉の近くにお住まいです。)

 

 

――中杉生の雰囲気も、いろいろと変化をしてきたわけですが、保健室に来る生徒も、年代によって変わるものですか?

 

篠崎:全然違いますよ!だいたい、保健室に来る人数からして違うんですから。年間ののべ来室者数は、2005年、2006年くらいがピークで、のべ5000人を超えていました。(※2019年度は2000人台) その頃は1日に40人も50人も保健室に生徒が来ていて、たった一人で一日に70人以上の対応をしたこともあったんですよ!

 

 

――その頃の生徒が特別に病弱だったとか、心を病んでいたわけではないですよね?今と何が違うんですか?

 

篠崎:学校全体の雰囲気ですよね。今の生徒たちは、基本的に休み時間にやってきて、授業開始に間に合うように戻って…とメリハリが効いています。でも、あの頃は、ただお喋りをしにきたり、授業をサボるためにくる子もけっこう多かったですよね。だから、保健室にいると「あれ?今は授業中?休み時間?」なんて分からなくなってました。来室者があまりに多くて、お昼ご飯も落ち着いて食べられないほどだったんですよ。

 

 

――そういう雰囲気が、今のように変わっていった理由は、何なんでしょう?

 

篠崎:もちろん、世の中全体が落ち着いて行って、保護者の皆さんの意識も高くなって、中杉生がマジメになっていったというのもあります。あとは、中杉の先生たちが若返って、「ちゃんと勉強させよう、授業をもっと良いものにしよう」という雰囲気になったのも大きいと思うんです。あとは、授業や部活中のケガも減りましたよね。先生たちの目が行き届くようになりましたし、世の中全体の「根性論」みたいな風潮も薄まっていったのもあると思います。

 

 

――世の中の変化、中杉の変化が、保健室からよく見えるものなんですね!

 

篠崎:この20年間で、先生方との良い協力関係が築かれていった、という感じがありますね。その来室者数が多かったころは、一日に病院に2回も3回も連れて行かなくちゃいけない日なんかもあったんですから! あの頃に比べると、先生方が私たちの代わりに病院に付き添っていってくださることも多くなって、助かっています。

――高校生のメンタル面での変化を感じることはありますか?

 

篠崎:心療内科やカウンセリングの敷居が低くなったなぁって感じますよね。昔は、生徒たちの悩みを全部保健室で受け止めてあげなきゃいけない場面があって、すごく対応が難しい局面もあったんですが、今はカウンセラーや先生方、保護者や医療機関と連携が取れるようになって、生徒にとっても良い環境になってきているのだと思います。そのぶん、連携のための連絡や調整、コーディネートといった仕事が増えたところもありますけど。

 

 

――「高校生のメンタルケア」という点では、苦労が多そうですよね?

 

篠崎:私もその分野を専門的に勉強してきたわけではないので、「もっとあんな風に対応すれば良かった」とか、つい親心が出てアドバイスめいたことを一生懸命しゃべってしまって「もっとちゃんと話を聞いてあげればよかったな」とか、くよくよすることもたくさんありますよ。

 

 

――でも、保健室が大事な居場所になっていたり、一番本音をこぼせるのが保健室だったり…そういう生徒が一定数いるものですよね?

 

篠崎:来てくれる子はまだいいんです。何か悩みを抱えつつも、保健室には足が向かなくって、私たちが知らないうちに学校に来なくなっていたり、退学しちゃってたり…なんていうことを後から聞くと、「何か保健室としてできたこともあったんじゃないかな」なんて思ってしまいますよね。

 

 

――その一方で、高校生活の中で良い方に向かっていく生徒もいるわけで…

 

篠崎:それはもちろん、そういうケースもたくさん見てきましたよ!いつも保健室に来ていた子が、次第に来なくなって、廊下でお友達と楽しそうに過ごしている様子を見かけたりすると、本当に安心するし、嬉しくなります。

 

 

――高校生にとって、友人関係が悩みの種、という子も多いでしょうからね。

 

篠崎:本当にそうですね!そういう意味で言うと、ある年代から、特に1年生の表情が変わってきた時期、というのがあるんです。それは高校生がみんなLINEを使うようになってきた頃です。それ以前は、新入生登校日があって、入学式があって…しばらくはみんな不安そうにしていたんですが、今は新入生登校日にはLINEのグループができて、とりあえず友人関係みたいなものができて安心できる。だから入学式が終わってオリエンテーション合宿が終わるころには、すっかり垢ぬけている。友だちの存在って、人の顔を変えるんだなあ、ってしみじみ思いますね。

 

 

――そうやって、日々、高校生たちの手当てをしたり、話し相手になったりするのが、中心のお仕事だとは思うのですが、高校生には見えないところでしているお仕事には、どんなものがありますか?

 

篠崎:事務処理みたいな仕事もけっこうあるんですよ。一日の終わりには、その日に来室した生徒のカルテをまとめています。PCが導入されていなくて、なおかつ来室者数も多かったころには、その日のカルテを時系列に整理するだけでも大変で、けっこう残業もしていました。あと、事務仕事としては、授業や部活でのケガなどに対応する保険の申請業務なんかもあります。あとは、季節業務として、オリエンテーション合宿や研修旅行、部活の合宿の前には、健康調査をしたり、食物アレルギーのチェックをしたり、旅行業者と食事の調整をしたり…なんていうお仕事もあります。3月から4月にかけては、健康診断を円滑に行うための準備もありますよね。

 

 

――季節業務、という点では、インフルエンザが流行すると、来室者もいっきに増えますよね。さながら「野戦病院」みたいになっている日もあるみたいですが、篠崎さん自身は、生徒からインフルエンザをうつされて…なんていうことはないんですか?

 

篠崎:ここ数年は風邪をひいて体調を崩すこともあったんですが、インフルエンザは1回もないですよ! 実はここだけの話、予防接種を受けるようになったのも、ここ数年のことなんです(笑)。

 

 

――インフルエンザに罹らないコツ、みたいのがあるんですか!?

 

篠崎:生徒からちょっとずつ抗体をもらっているんじゃないですか?(笑)…というのは、冗談としても、寝る時には、必ずマスクをして寝るように心がけています。あとは、よく寝て、よく食べているからじゃないですか?

 

 

――新型コロナウイルスの影響で、急に休校が決まってしまいました。「退職に向けて生徒のみんなと接するのもあと少し…」なんていうタイミングで、生徒に会わないまま退職を迎えることになりました。消化不良みたいな感じはありませんか?

 

篠崎:この時期に退職を迎えることは、前々から決まっていたことなので、特にそういうことはないですね。実は、以前は制度上63歳が退職となっていたので、そこで退職するつもりだったんです。でも、退職1年前くらいに「制度が変わって65歳定年になった」って言われて。もう後任に託して辞めるつもりでいたのに、後任と頼んで引き継いだ方が、何人か辞めてしまって、「あと2年頑張って、しっかりと引き継ぎをしよう」と腹を括りました。そういう意味では、引継ぎをまっとうするための2年間を思い描きながら働いてきたので、休校くらいでジタバタする感じではないです。むしろ生徒が来ないんで、最後の引き継ぎがじっくりできるかな、って(笑)。

――あらためて、23年半を振り返ってみて、どのように感じますか?

 

篠崎:私たち保健室スタッフが頑張れるのは、生徒の皆さんとの関わりが3年間という期限付きだから。私たちが感情的にのめり込んでも、3年後には卒業していってしまうし、そこから先の人生は背負えませんよね。でも、だからこそ目の前の3年間は全力で対応しようと、そんな風に思ってやってきました。3年間いろんなことにつまづいて、高校在学中はなかなか思うようにいかなかった子が、卒業後に活躍していたり、心身の問題を乗り越えたりしている、という話を聞くと、本当に嬉しくなりますね!

 

   私たちは資格的には「看護師」なんですが、学校で働く、というのは特別な体験だったと思います。もし、普通の病院に勤めていたら、職員以外は(老人を中心として)病気やけがを負っている人たちです。ところが、学校って、若い元気な子たちがたくさんいるじゃないですか!日々、元気をもらえる楽しい職場でした!!

 

 

――最後に、在校生・卒業生にメッセージをお願いします。

 

篠崎:感染症が流行っている、ということとは関係なく、「ちゃんと食べて、ちゃんと寝る」規則正しい生活をすることが、何と言っても大事です。あと、がんばることも大事だけれど、疲れたらちゃんと休むのも、とっても大事。中杉生は「何をやりたいか分からない」といって立ち止まってしまう子も多いんだけど、たった人生十何年の間に見聞きした情報なんてたいしたものじゃないんだから、もっと広くいろんなところにアンテナを張り巡らせて、将来を思い描いてほしいですね。あと、友だちや周りのことを気にし過ぎていてもダメ!自分のことや自分の意志を、自分の言葉で考えて、自分の言葉で他人に伝えらえるように、中杉で成長していってください!

 

 

(2020年3月5日)

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