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58期新入生に向けた祝辞

2020/05/09

新入生のみなさんへ
 中央大学総長 酒井 正三郎

みなさん、こんにちは。中央大学総長の酒井正三郎です。 中央大学杉並高等学校の令和 2(2020)年度の学期の開始にあたり、中央大学の教職員を代表して、ひと言お祝いと激励のご挨拶を申し上げます。

まずは、今年度中央大学杉並高等学校に入学された 315 名の新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。また、今日までご子女を見守り、励ましてこられましたご父母のみなさまにも、心よりお祝いを申し上げる次第です。

今年度は、ご承知のとおり、新型コロナウイルス禍の感染拡大防止のため、例年どおりの入学式は挙行されず、現在のところ、教室での一堂に会した形での通常の授業も行われておりません。政府の緊急事態宣言を受けた、学校法人中央大学としての特別措置の実施によるものではありますが、みなさんには待ち望んでいた高校での勉強や部活動、友人との出会い等が変則的な形でスタートすることになりましたこと、心からお詫びを申し上げますとともに、何よりもみなさんの健康と安全を最優先してとられた本措置に対して、ご理解とご協力をお願い申し上げる次第です。

あらためていうまでもありませんが、中央大学杉並高等学校は中央大学の附属の高等学校ですので、3 年後みなさんの多くが進学する中央大学について、ここで簡潔に言及しておくこととします。中央大学は1885年(明治18年)、18人の少壮気鋭の法律家によって、「實地應用ノ素ヲ養フ」を建学の精神に掲げ、英吉利法律学校として創設されました。創立当時からの実学を重んずる学風は、創立 135 周年を迎えた今日においても脈々と受け継がれ、大学における研究・教育活動の中に生かされています。ここでいう実学とは、単に実用に即した知識や技能の修得だけをめざすものではありません。それは学問的探究を通して創造的批判精神を養い、社会での課題に応える知性と感性を育成するという点に、その核心があるものであります。この精神のもと、中央大学は今日まで約 58 万人の卒業生を輩出し、多くのみなさんが社会の第一線で活躍するわが国屈指の私立大学です。

さて、みなさん、みなさんは今年から高校生です。高校では、義務教育として手取り足取りの細かい指導があった中学時代とは異なり、他人に迷惑を及ぼすものでないかぎり、1人ひとりの意見や行動は基本的に尊重されます。したがって、そこではつねに、自分の言動(言葉や行動)に責任を持つという心構え、すなわち上で述べた本学の建学の精神にも通底する自律の精神というものが大切になります。それでは、この自律の精神とは一体どのようなものでしょうか。私はそれは、自分の言動がいかなる意味を持っているか、まわりにどのような影響を及ぼしているかについて、想像(イマジネーション)する力、想像力と本質的に同義であると考えています。

自律的な個人が行う現実の行動は、多くの場合、何らかの目的を持っています。マックス・ウェーバーというドイツの社会学者は、これを「目的合理的な行動」と呼び、これは組織などの場合にも基本的にあてはまると主張しています。たとえて言えば、会社であればもうけを沢山あげること。テレビ番組であれば出来るだけ多くの人に視てもらうこと。プロのサッカーや野球のチームであれば優秀な選手を獲得して強くなることなどであり、これらが「目的合理的な行動」と呼ばれるものです。

しかし、いくら「目的合理的な行動」と言っても、(時おりニュースになったりしますが)、脱税や粉飾決算によって利益を過大に計上したり、視聴率を稼ぐために番組を捏造したり、勝つためにアマチュア選手に不正な金銭供与をしたりといったことは、社会的に許されることではありません。したがって、自律した個人や組織としての行動が、真の意味で目的合理的であるためには、このような目に見えることとは違う、もっと本質的に大事なことがあると言うことです。それは自らの行動が、どのような意味で相手のためになっているか、人の役に立っているか、さらには社会の福利の向上に寄与しているかをつねに考えることであり、その上での「利益」であり「視聴率」であり「勝利」である、ということです。

私ごとで恐縮ですが、私は、サン=テグジュペリの童話『星の王子さま』が大好きです。(おそらく皆さんの中にも、この本のファンが沢山いるのではないかと思います。)この本の一節に「大事なことは、目には見えない」という有名なフレーズがあります。目に見えているものは上辺(うわべ)、外側だけであって、心でものを見なければ本当に大切なものは見えてこない、という意味です。ここでいう心でものをみる力こそ、想像力そのものです。

中央大学杉並高等学校、中杉の学校案内によれば、中杉が掲げる教育理念は「真善美」の涵養にあるということであります。これは「真」で知性を、「善」で理性を、「美」で感性を代表したものです。これまでのべてきた自律の精神の持ち主とは、まさにこれら知性・理性・感性の涵養を目指し 、努力する人間のことである、ということができます。

みなさん、みなさんは今年から中杉生です。このことは、自分の想像力を磨き、自ら考え、自律的に行動する人間になるための、真の勉強ができる、そのために必要な前提条件をみなさん自身が手にしたということです。ここで自律の精神という、人生の土台をしっかりと学んでいっていただきたいと思います。みなさんのこれからの高校生活が、心身ともに健やかで、実り豊かなものとなりますことを心より祈念して、私のお祝いと激励のメッセージといたします。

おめでとう。

頑張ってください。

祝辞
 中央大学商学部長 渡辺 岳夫(本校卒業生)

新入生の皆さん,ご入学,誠におめでとうございます。また,ご父母・ご親族の皆様方にも,心よりお祝い申し上げる次第です。中央大学を代表して,お祝いのご挨拶を申し述べさせていただきます。

ご子女の皆様は,合格発表を受け,期待に心躍らせながら,四月以降の「通常の」高校生活を待ち望んでいたことと思います。しかし,学校法人中央大学危機管理本部は,新型コロナウイルス感染症対策として,大学のみならず附属の高校についても,五月二十七日まで原則として教職員・学生・生徒のキャンパスへの入構を禁止しました。そして,杉並高等学校は,五月十一日から遠隔で授業を実施することになっていると仄聞しております。

杉並高等学校のキャンパスに実際に足を運び,授業を受け,友人たちと語り合い,部活に打ち込む等の高校生活を思い描いていたであろうご子女は,現在とても不安を感じているかもしれません。また,ご父母の皆様におかれましても,しっかりとした高校教育をご子女が受けることができるのかについて,ご心配なされていることと存じます。しかし,中央大学杉並高等学校の教職員一同は,たとえ集合型・対面型の授業を行うことができなくても,遠隔授業を通じて,ご子女の皆様にしっかりとした学びを提供することができるように準備しているものと確信しております。

私がそのような申し上げることができるのは,私が中央大学杉並高等学校のことを良く知っているからです。私は三十七年前に,今年の新入生の皆さんと同様に,期待と不安に胸を一杯にしながら,杉並高等学校に入学をいたしました。私にとって,杉並高等学校は人生における原点とも言える存在であり,現在の自分を形成する学びや経験の機会を提供してくれたかけがえのない場所です。

確かに本年度の新入生の皆さんは,パソコンやタブレット,あるいは携帯電話の画面を通じて高校での学びを開始することになり,例年とは全く異なる環境に置かれているように感じられるかもしれません。しかし,対面による教育ができないという制約があるからこそ,より皆さんの理解を促進できる最適な教育方法や教育コンテンツが新たに探究されることでしょう。皆さんには,これまで誰もが経験したことのない新しい教育体系の下での初めての体験者として,コロナ後の世界を構築する重要なプレイヤーになってほしいと思います。

新入生の諸君は,なりたいものにはなんでもなれる原石のような存在です。諸君は,これから自分で自分を磨いていくことになります。先生方や学校は,諸君が自らを磨くための充実した環境を与えてくださるでしょう。三年間かけて,自分なりの磨き方を見つけ,そして自分で磨き上げていってください。誰かが自分を磨いてくれるのを待つことはやめましょう。

皆さんは,ネルソン・マンデラという人を知っていますか?かつての南アフリカ政府が実施していたアパルトヘイトという,黒人の参政権を否定し,住居地の指定などを義務付け,教育でも白人と黒人を徹底的に分離した悪名高い人種差別政策に抵抗し,二七年間に及ぶ獄中生活を経た後にも,アパルトヘイト撤廃に尽力し,一九九四年に南アフリカ大統領になった人です。彼はどのような逆境においても,決して自分の身の上に起こっていることを他人のせいにしませんでした。彼は言います。

 自分たちが置かれた状況を他人のせいにしたり,

 自分たちの発展を人頼みにしたりするのはもうやめよう。

 自分の運命の主人は自分なのだから。

新入生諸君を取り巻く現在の世界は,不確実性に満ちています。前に進むことに不安や心配も多いでしょうが,このような世界だからこそ,自分で自分の道を切り開いていくことが必要なのです。

皆さんの多くは三年後,中央大学の門をくぐることになるでしょう。大学生活は,誤解を恐れずに言えば,自分が生涯をかけて熱中して取り組むことのできる何かを見つけるための「旅」です。高校は,その旅を続けるための体力や素地を形成する場です。高校の先生方に支えられ,そして自分磨きを怠らず,たくさんの素晴らしい経験を,この中央大学杉並高等学校でしてください。そのことをお祈り申し上げ,私のご挨拶とさせていただきます。ご入学,本当におめでとうございます。

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